ある日突然なくなった炊飯ジャーを、 たまたま見かけた濡れた男が持っていて、 そこからいろいろあって、 五反田の駅ビルの屋上から地獄に旅行に行く夫婦の話。
会話という言語と、そういう意味で言ったんじゃないけど、 という気持ち(非言語)の間を絶妙に表現している。
最近の劇作家出身の作家は、言葉の周辺のニュアンスとか、 言葉の裏側のどろどろした部分とか、 会話のずれの間の気持ちみたいなところを描くのが特徴的で、 そこが面白さとなっている。
夫婦のくだらない気持ちの入らないグダグダの会話、ほんとにこんなだよなぁ〜と妙にリアルです。 たまに二人で出かけて食事をしても別に話すことなんかないし。 旦那はフザけた事ばかり言ってて実のある会話も出来ないから「バカじゃないの」が口癖になる。 特に妻側から見た、なんだかな〜っていう倦怠感がよく出ていました。
しかし、これが新婚ってところが問題なわけで地獄へでも何となく旅行に行こうかとダラ〜っとしつつも行く二人。 どんな地獄かと思えばこれまた緩〜い地獄でダラダラと進む二人。 お客様係の荒川良々とのやり取りも妙な間で長いけど嫌いじゃないです。 ちょっと途中ダラダラしすぎてるかな?と飽き気味になりつつも最後の方でふたりの笑顔が良かったなと思いました。 それにしても良く考えてみたら結構な冒険をしてるわけですが、そう感じさせない変な世界でした。
竹野内さんがいつものイメージと全然違う天然系のノブをすごく自然に演じていて、こんな人いるよねって感じで面白いです。 平凡で冴えないサラリーマンって感じで頼りないんですが、さすがに笑顔が可愛くて憎めないタイプ。 これが本気でイライラさせるタイプの役者さんだったらこの雰囲気は出なかったと思われます。 水川さんとの掛け合いが自然で本当に長年いっしょにいる夫婦のようでスーッと話しに入って行けました。
夫婦はこうでなくてはいけないとか、思っていたのとは違うとか、幸せって何だろうとか、そんな迷いがある人が見るといいんじゃないかな? ま、いっか。って感じで肩の力が抜けるかも知れません。 まぁそんなに壮大な悩みが無くてもなんとなく観ても楽しめるかと思います。
全体的にいえば、いま一つだったきはする。 地獄の描かれ方もそんなに驚くほどじゃなかったし、そんなにハラハラドキドキもしなかったし、考えさせられたり感動することもなかった。 それだけで言うならば、星は2個でもいいと思う。 星を3個にしたのはキャストと、最後にあることを感じたからだ。
キャストはよかったと思う。
主演の二人はもちろん、脇を固める俳優もよかった。 キャスティングには◎をつけてもいいと思う。
見終わったときに感じたのは、「マンネリになった時には刺激が必要なのかもしれない」ということだ。
この映画は新婚なのに倦怠期を迎えたような夫婦を中心に描かれているが、夫婦に限らず情熱が冷めることはよくあることだと思う。 そんなときに必要なのは“刺激”だということを教えられた。 それを受け、かつての情熱を思い出したり、新たな発見があったりする。
でもそれは待っていてはいけない。
本作の大木夫妻は、たまたま巡り合った占い師に導かれて地獄に行き刺激を受けることができた。 しかし、多くの場合そんなことはまずない。 だからマンネリを感じた時には待っていてはいけない。 それを与えてくれそうな人に会ってみたり、本を読んでみたり、アンテナを上げてみたりすることが必要だと思う。
生活にマンネリを感じているような人には見てほしい。 そして“刺激”の必要性を感じてほしい。
ある日突然なくなった炊飯ジャーを、 たまたま見かけた濡れた男が持っていて、 そこからいろいろあって、 五反田の駅ビルの屋上から地獄に旅行に行く夫婦の話。
会話という言語と、そういう意味で言ったんじゃないけど、 という気持ち(非言語)の間を絶妙に表現している。
最近の劇作家出身の作家は、言葉の周辺のニュアンスとか、 言葉の裏側のどろどろした部分とか、 会話のずれの間の気持ちみたいなところを描くのが特徴的で、 そこが面白さとなっている。
若い夫婦の"地獄"への旅行記であまりストーリーらしきものはないが、非日常の地獄旅行という素材を使って日常的な感情をうまく 表現している。 たとえば、"主人公感"ということば、読者にそういう感じってあるなあと思わせる。 また、地獄旅行中の二人が感じることはインドや東南アジア、中近東などの田舎を旅したことがある人ならきっと自分の過去の旅での自分の感情を思い出すことだろう。 ちょっと千と千尋に似すぎているような気もするけど、読了後にいい旅をしたという気持ちにさせてくれる一冊だ。
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