東京湾岸の下町と高層建築が混在する風景を綺麗とは思う。心の空虚さを埋め合わせる存在である人形が心を持つという物語である。ながらく是枝監督はノン・フィクション作家(『しかし…-ある福祉高級官僚 死への軌跡』)という認識だったのが、いつのまにか有名な映画監督となっていた。最初に原作とペ・ドゥナありきだったのかな、と少し意地の悪いことを感じた。
業田良家の原作を愛するものとして。
映画に対する感想として、付加や省略は大いにあるが、原作の持つ生命の賛歌を見事に 表現し得たことには、とても胸を打たれた。
ぜひご覧になってもらいたい。本当に秀作だと思う。 私はDVDを、100回以上は観ると思う。
4コマという形式をとることで作者があらわしたかったことは何だろう。 それはただ単に、乱暴亭主とそれに耐える不幸な妻のドタバタ、というものではない。 どん底に居ながら、どこか突き抜けたところのある2人のやりとりを描くことで、 一見救いのなさそうな生活が、読者にとってどこか安らぐ場に思えてくる。
そして下巻では、一転して幸江の薄幸な少女時代が描かれる。 上巻とはまるで違ったトーンで、ことさら4コマにしなくてもいいぐらい、 ストーリー性があふれている。 上巻と下巻のギャップには意味があるのだ。
下巻の最後数ページ。 大きなお腹を抱えた幸江が、少女時代に心ならずも裏切ってしまった熊本さんと 駅のホームで再会する。
「幸や不幸はもういい。どちらにも同じだけ価値がある」
業田は、この言葉を言いたくてイサオにちゃぶ台をひっくりかえさせていたのかもしれないと思う。
このマンガを読んで、星新一氏の『服を着たゾウ』(象)を思い出しました。どちらも、人間ではないものが「心」を持ったら、と、富の分配、がテーマですが、星氏の著作が陽なら本書は陰です。現在より進んだ格差社会が物語の舞台なため、どうしてもお話しは暗くなります。 世界の富の描写などは、政治風刺ギャグマンガで鳴らしている著者ならでは。
星が一つ少ないのは、ロボット(アンドロイド)のハードウェア面やアクションシーンの描写が物足りないため。物語はこのままで『攻殻機動隊』の士郎正宗氏が作画したものも読んでみたいもの。作中、小雪嬢が街の監視カメラを直にハッキングするシーンで、コードを首の後ろに挿していますが、『攻殻…』の影響なのかも。
蛇足ですが、本書のタイトルは古典SFの『アンドロイドお雪』を連想させます。そして、レビューのタイトルも…お分かりですね。
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