昨年劇場で公開されたリストア版を見てから、 ようやくこの映画のDVDが日本で発売されるのだろうかと楽しみにしていたが、 1年近くが過ぎて、その気配はなし。 Amazonで“いちご白書”って検索するとアダルトばかりが引っ掛かる。w 武蔵野館ではフィルムの上下をマスクして無理やりのワイドでの上映。 おかげでブルース・デイビソンのジャンプしたストップモーションの顔が、 スクリーンから半分くらい切れていた。 いいタイミングでバフィー・セント・メリーが歌うサークル・ゲームが流れるのだけど、 こういう映画館の心無いおせっかいで映画が台無しになってしまう。 リバイバル上映してくれるのはありがたいが、余計なことするなと思う。 この映画に限らず、サイズを販売側が勝手にトリミングしてしまうものが少なくない。 劇場公開版のディスクは上下をカットしたワイドサイズでの収録。 ラストのブルース・デイビソンのストップモーションはきわどく顔が切れてはいないけど、 映画館で上映されたものは明らかにスクリーンの上下の暗幕に相当な分量の映像があったことはたしか。
日本盤が出ないからここで見つけた輸入盤をクリック。 公開時のバージョンと、昨年公開された7分ほどの追加シーンがあるバージョンの2枚組。 サイズはオリジナルの4:3のスタンダード。 チャプターもなければ、英語字幕さえないのが少し残念だった。 フィルムは丁寧に修復されてます。 もちろん元が16mmフィルムでの撮影だから、過度な期待はする方が無理。 サウンドトラックもモノラルのままだが、 映画の中で主人公がラジオに耳を傾けるように、当時はこんな音で聞いていたのだと懐かしむ。 簡単にファイルをダウンロードしてしまう今よりも、音楽を大切に聞いていた時代だ。 随所に出て来る俯瞰でとらえた群衆のカットがドキュメンタリーのようで、 息苦しいスタジオを飛び出して手持ちの16mmカメラで自由に撮影された映像は今見ても鮮やか。 分厚い契約書に拘束されることなく、作家が思うままに自由に描いた映画。 日本版が発売されることを切に願ってしまう。
BANBANもしくは荒井由実の唄に出てくる あの映画です。 学園紛争を背景に描かれる“甘く切ない恋の映画”と 勝手に思い込み、見ずに過ごしていました。 ところが、これが、ある意味、面白い。 監督が意図していたのかはわかりませんが、 大人=加害者 若者=被害者 という ありがちで感傷的な視点では描かれていません。 登場人物と学園闘争を、かなり引いた視点で 客観的に描いています。 (後から知ったのですが、原作がそうなのですね) 主人公は、かなり痛いヤツで、 好きな女の子を振り向かせる手段として 当時はやりだった学生運動に共感もなく参加し、 恋敵と競争するうちに、のめり込んでしまい 自分の行動に歯止めがきかなくなってしまいます。 あの時代を伝聞でしか知らないボクは 大学のやり口はひどいと思いましたが、 学生たちのエスカレートぶりを怖いとも感じました。 世界平和をうたいながら 周囲の社会と結びつくことを拒絶するあたり、 なんとなくセクトっぽいです。 現代の若い人が見ると、 得体のしれない熱狂に浮かされてしまうかもしれません。 ご用心 ご用心。
ユーミンの「いちご白書をもう一度」が大ヒットして、今でも時々聞くことが出来るのに、当時、あれだけ衝撃的な評判を取った映画「いちご白書」を見る機会はほとんどない。今回、この原作が復刊されて、改めて当時のことを思い出してみた。
日本では70年安保で全国の学園で「闘争」が起こっていた。それは、日本だけでなく、世界中の学園で起こっていた。この本は、アメリカのコロンビア大学紛争を扱っている。場所は違っても、若者たちのどうしようもない怒りの捌け口は変わらない。荒っぽい、強引な論理であり、一般的には、この本の中にもあるが、「ゲーム」をしているような感覚が一部にあったことも確かだろう。それでも「戦争」(当時はベトナム戦争)に対する反対の意思表示をどうしたらいいかといった時、何かしないではいられなかったのである。
この本を復刊した人の意図は何だろう?その後の「高度成長」の中で、日本が失ってきてしまった「心」が、そこに見出せるということではないだろうか。
初めてバフィー・セント・メリーの歌を聴いたのは、もう20年以上も前、映画『ソルジャー・ブルー』の中であった。非武装のインディアンの村落(ほとんどが女子供だった)を騎兵隊が襲って、一方的に殺戮したという衝撃的な史実「サンドクリークの虐殺」を映画化した問題作。その仮借なきクライマックスに頭がしびれて、映画を見終わった後、レンタルで借りてきたVHSを巻き戻してたまたまオープニングをもう一度観た時、そのバックに流れる彼女の歌声がとてつもなく切なく胸に迫ってきて、まさに一曲の歌が「心に焼きついて」しまった瞬間だった。 その後、偶然にも中古のアナログ盤のシングルを手に入れることができたのだが、盤面はきたなく、物凄いノイズだらけのレコードだった。それをカセットテープに録音して、繰り返し聴いたものだった。
去年、リバイバル上映された青春映画の名作『いちご白書』のオープニングを飾っていた歌も、バフィー・セント・メリーだった。主題歌とも言える「サークル・ゲーム」は、聴いた瞬間に恋に落ちてしまった!そしてこの映画が正解だったのは、エンディングで再び「サークル・ゲーム」がかかる事だ。そして性懲りもなく、またじ〜んときてしまった。そう、セント・メリーの歌は、映画を観終わった後で、もう一度聴くと本当に胸に迫ってくるのだ! 通販で、輸入盤CDも自由に購入できる時代になっているというのに、セント・メリーのアルバムを一度も探した事がなかったこの愚かさよ!早速アマゾンで検索して、ベスト盤にあたる本アルバムを購入した。
バフィー・セント・メリーは、アメリカ先住民(クレー族)の血を引く、1941年カナダ生まれ・アメリカ育ちの歌手。マサチューセッツ大学卒業後、先住民の伝統工芸品を売りながら歌手活動をし、'64年にヴァンガード・レコードからデビュー。反戦や、先住民の人権といった思想を強く歌に反映させたプロテスト・シンガーとして活動し、アメリカ当局から「要注意人物」にリストアップされ、レコードが販売規制されるといった憂き目にもあったという。本アルバム『BUFFY SAINTE-MARIE Soldier Blue The Best of the Vanguard Years』は、バフィー・セント・メリーのヴァンガード時代の曲を集めた入魂のベスト盤だ。 アルバム内のライナーノーツなどには、彼女のアルバムジャケットワークが掲載されていて、ちょっとくすんだ赤を基調とした、独特のオーセンティックなアートワークに目を奪われる。そして、『ソルジャー・ブルー』の原作ペイパーバックの表紙、後ろ手に縛られている裸のインディアンの女性の「写真版」(日本版DVDのジャケットはイラストだった)のアートワークも載っている。ヴィジュアル的にも興味深いアルバムだ。
1曲目を飾るのは、ドノヴァンが歌った事で知られる、彼女の代表曲ともいえる反戦歌「UNIVERSAL SOLDIER」。ユニバーサル、つまり世界中の、歴史上の全ての「名も無き兵士たち」を歌った曲である。 ♪〜 彼はカトリックで、ヒンドゥー教徒で、無神論者でジャイナ教徒、仏教徒でバプティストでユダヤ教徒で、人殺しはいけない、と知っているのに殺し続ける・・・そう、彼らは、私たちのかわりに手を汚してくれているのだ。彼はカナダのために戦う、フランスのために、アメリカやロシアや日本のために戦う。いつかこの戦争が終わることを信じて・・・。
この歌に込められたのは、「戦争の責任は誰にあるの?」という問いかけ。兵士たちは、上官の命令に従っているだけだ。では将軍は?その将軍に命じたのは政治家だ。でも、その政治家を選んだのは、そもそも私たちではないのか?そして兵士たちは、私たちのかわりに命を危険にさらし、その手を汚しているのだ。戦争は、この世界に生きている、一人ひとりの人間に責任があることを歌っている、感情論に決して流されることのない、心打つ歌だ。
そして、2曲目は「THE CIRCLE GAME」! これはジョニ・ミッチェルがニール・ヤングのために作った歌で、「十代が終わってしまう事の悲しさ」がテーマ。オリジナルのジョニ・ミッチェル版は、ゆったりとしたテンポで、子供たちの合唱も加わりながら歌われているが、映画『いちご白書』のために歌ったセント・メリー版は、青春のエネルギーがはちきれんばかりのヴォーカルで、朗々とリズミカルに、回転木馬に重ねながら巡り巡ってゆく年月を謳い上げる、永遠の名曲だ!ミッチェルさんには申し訳ないのだが、セント・メリー版の方がダントツに好きといわざるを得ない。筆者はもう、買い物に行く時の車の中でも、狂ったようにこの曲ばかり聴きまくっている事を告白します。
20歳そこそこだった筆者が、かつて心奪われた「SOLDIER BLUE」は5曲目。 「ソルジャー・ブルー」の「ブルー」は、騎兵隊の濃紺の制服の事だが、もちろんそれだけではない。憎しみと殺し合いを繰り返す、人類へ向けた悲しみの色、でもあるのだ。映画『ソルジャー・ブルー』はインディアン虐殺を描いているが、それはベトナム反戦を投影した〈擬似ベトナム戦争映画〉だと言われている。映画のオープニング、キャンディス・バーゲンのシルエットに重なって響き渡るこの曲は、もう言葉で言い表せない哀しみをたたえて、いつまでも荒野をさまよい続けるのだ。
バフィー・セント・メリーの歌は、時にはフォーク調、時にはカントリー調、時にはポップ調と、まさに「あの時代」の空気感を反映したヴァリエーション豊かなメロディー。独特の、震えるような歌声が彼女の歌を印象的なものにしていて、アナログ盤で「ソルジャー・ブルー」を聴いていた時は、レコードの状態があまりにひどかったので、そのせいで歌声が震えているように聞こえるのかと思っていたが、そうではなかったことが、CDで聴いて改めて判った。 このベスト盤を聴いてみて筆者の印象に強く残ったのは、『ILLUMINATIONS』というアルバムから収録された曲で、このアルバムは彼女の出自であるインディアン世界の、シャーマニックな心への原点回帰をテーマにしているように見える。9曲目の「GOD IS ALIVE, MAGIC IS AFOOT」は、呪文のような魔術的印象を与える歌で、同アルバムから収録されている15曲目の「THE VAMPIRE」も非常に興味深いのは、西洋の吸血鬼のイメージとちょっと違う雰囲気を持った曲調だということ・・・冷たい月光の中、インディアンの精霊信仰の神話の如く、荒野をさまよう孤独な幽鬼の姿が目に浮かぶ。優れた音楽は、まさにインスピレーションの泉だとつねづね筆者は思っているのだが、こんなところにヴァンパイアものの新鮮なイメージがあったではないか!ハリウッドはキャラクター化されたヴァンパイアのイメージをこすり続けているヒマがあったら、このプリミティヴでシャーマニックな、精霊世界のヴァンパイア像を一刻も早く具現化すべし。
もっと他の曲もレビューする予定だったのだが、思わず長尺レビューになってしまったので、この辺で失礼したいと思う。 プロテスト・シンガーというと何やらお堅い印象を受けるかもしれないが、とにかくバリエーション豊富なシンガーである。筆者にしてみれば、また一つ宝物が増えてしまった、という感じです。
最後はかなり淡泊ですらりとした終わり方ですが、終盤の随所で感動します。 自殺を考える健康な少年と、自殺さえ出来ない余命わずかな少女。そしてその幼なじみの少年。
汚れなき、美しい三角関係とでもいうのでしょうか。 物語として非常に上手い構成になっていますし、あらゆる要素が詰め込まれている気がします。 教育問題、親の子に対する深い愛情、生と死、恋愛関係…
これは、死ぬ前に一度は読まなきゃ損です。
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